こんにちは!
山梨百名山チャレンジ担当、店長の綾井です。
エルク40周年企画として始めた、山梨百名山を全て登って紹介する
山梨百名山チャレンジ
2023年にほぼすべての山に登った中で、どの山が一番辛かったかと聞かれると
迷わず私はこの山を上げるでしょう。
笊ヶ岳(ざるがたけ)、南アルプス白峰南嶺に位置する標高2,629 mの山で
山梨百名山だけでなく、日本二百名山にも選ばれている知る人ぞ知る名峰でしょう。
名前の由来は笊を伏せたような山容からきており、遠くからも目立つ「大笊」と「小笊」からなる双耳峰が特徴的です。
同じく山梨百名山で難関峰と知られる笹山と同様に
登山の対象として人気の少ない、南アルプスの白峰南嶺上に位置します。
白峰南嶺の奥(西側)には赤石岳や聖岳など、3,000mを越える高峰が連なっているので
笊ヶ岳も南アルプス前衛の山といえるのですが
とても前衛の山と呼べないほど、どの登山口から登っても遠く険しく
登山者を容易に近づけない山となります。
登山口の老平から山頂までの往復は、距離にして20km、累積標高差は3,000m、コースタイムは16時間
ただただ体力勝負、山百の中でも群を抜いてハードなモンスターマウンテン。
日帰りなら超ハード、尾根上でテント泊する場合でも水を担ぎ上げなければなりません。
山梨百名山を完登するうえで、まさに最大の障壁となるのがこの山です。
この山に足を踏み入れたのは8月2日、夏の盛りど真ん中の猛暑日となりました。
山梨百名山チャレンジの中でも最もハードになるだろう、笊ヶ岳登山が幕を開けます!
【登山レポ①】
老平駐車場 -広河原ー山の神ー桧横手山
早川町の南アルプス街道、県道37号線から雨畑大島線に入り
ヴィラ雨畑という施設の脇道に入って進んでいけば、今回の登山口駐車場である
老平駐車場に到着です。
早川町の乗合タクシーもあるみたいですが、1泊にせよ早い時間に出発した方がいいので
やはり自家用車でアクセスして、早朝スタートが一番いいでしょう。
出発前の準備をしながら、笊ヶ岳登山案内図を見て、長い行程に向けて決意を固めているさなか
この場所からすでに試練は始まっていました、、
大げさではなく、20か所以上蚊に刺されました🦟
(写真は控えさせていただきます)
標高が約500mと低いため、夏は蚊にめちゃくちゃ刺されます。
夏に行かれる際は虫よけスプレー必須です!
ゲートを越えてしばらく行けば
林道はすぐに砂利道、ダート道へと変わります。
進行方向左手は深い谷、断崖絶壁に作られた酷道で
山側からは落石が落ちてこないか気になるような道です。
いまや笊ヶ岳へと挑む変わり者の登山者たちしか利用しないのでしょう。
沢の源頭部方向に目をやれば、朝日に輝く尾根が遠く見えますが
目的の尾根なのかは検討がつきません、
Y字の分かれ道が出てきますが、道標通りに進みましょう。
30分もかからず車道終点に到着し、ここから山道へと変わります。
山道に入ってからすぐに、立派な石垣が積まれた廃家屋が数件出てきました。
作業小屋だったのか、人が住んでいたのがは定かではありません。
山道に入ってからも、足元の悪いトラバース道をひたすら歩いていきます。
しばらく進めば立派な吊り橋も現れます。
立派とはいえ、あくまで「この笊ヶ岳登山では」の話。
踏板には人一人分最低限の幅しかなく、なかなかスリリングです。
もともと橋が架かっていた場所も、橋が崩壊し
足もとがとても悪い沢を渡り、梯子を登ってセーフティーゾーンに行く場所や
落石も怖い、ガレ場のトラバース
そして最も恐ろしかったのは、このひしゃげた鉄橋です😱
奥に進むにつれて足の置き場が奈落の底に向いているという、恐ろしい橋です(笑)
まだまっすぐになっている橋桁に足をかけながら渡りました。
笊ヶ岳は長い急登に注目が集まりますが、登山口~広河原間のトラバース道がとてもスリリングで
神経を使う区間となっています。
少し前まで深い崖の脇道を歩いていたのが、気が付けば河原が近づいてきました。
河原沿いを進んでいけば
広河原に到着、ここが最後の水場ポイントです。
ここから対岸に渡り、尾根に取り付くのですが
対岸へのジャンプポイントもありますよ~💨
今回はジャンプで届く水量でしたが
水量が多い場合は、渡渉となるので要注意です!
広河原までいいペースで進み、一時間を切る時間で到着しました。
「コースタイムが甘めだね~」
なんて余裕ぶっこいて休憩を取りましたが
おにぎりなんて食ってられないくらい、これから苦しむなんて
この時は想像だにしませんでした🙄
広河原からはいきなり急登が続きます
ここからが笊ヶ岳の本番スタートでしょう!
尾根に上がるまでは足場の良くない九十九折をひーひー登ります。
出だしの九十九折区間の急登は、写真よりも等高線を見てもらえれば一目瞭然。
チェックポイントの桧横手山までも、等高線の感覚が緩むことはありません、、
この時点でフクラハギが攣るんじゃないかというくらい、急登に足を使ってしまいました。
尾根に乗れば、夏の日差しが降り注ぎ
強い日差しと、蒸し暑さで体力が一気に削られます。
小さな祠が置かれた「山の神」到着です。
広河原から続いた急登のなかでは、この場所は珍しい平らな場所。
笊ヶ岳登山のオアシスポイントです。
既に綾井はこの時点で手がプルプル震えてきて、いきなり熱中症の症状が発症。
水分を取ってペースを落としていきますが、私よりも強い努龍さんもすごい汗、、
頬を伝う水は、汗か涙か笊ヶ岳の洗礼か😭
一人先に進む努龍さんを追いかけながら、まだまだ続く急登を登り続けます。
待って~🫱
立ち眩み、筋肉のけいれんが始めって
待って~🫱
更には吐き気を催してきて、いよいよ下山した方がいいだろうという状態になってきましたが😇
ここで敗退しても、また来るのが何より嫌すぎて、黙々と登り続ける事にしました。
途中富士山展望スポットが出てきますが
写真を撮ってすぐに動き出します。
私が見たいのは富士山ではない、笊ヶ岳の山頂!
少し傾斜が緩くなってきて、ようやく努龍さんに追い付いてきましたが
努龍さんもすごい汗!(かっこいい!🧔🏻)
広河原で水を補給したとはいえ、この登りでかなり消費してしまいました。
2人でもう少し進んでいくと
桧横手山(ひのきよこてやま)に到着です。
老平からここまで既に1,500mUPしたのに、まだ標高は2,000mを越えたばかり、、
桧横手山のピークは、平らになっている場所があるので
テント泊のポイントにのなっています。
テントを背負ってここまで来るのは大変でしょうが、日帰りもきついんだから
どっちもどっちですね。。
【登山レポ②】
桧横手山ー布引山ー笊ヶ岳ー老平駐車場
桧横手山を越えて次に目指すのは「布引山」です。
布引山まで行けば、白峰南嶺の稜線に乗る事となり
少しは楽になるのですが、ご覧の通り急登はまだまだ続きます。
布引山まで約560mUP、距離は短い分相変わらずの急登が続きます。
このブログを書きながら思ったのですが、きつさ,山行時間の割に写真の量が少ない!
しんどくてしんどくてカメラを構える元気もなかったのだと思います、、
こんなにうつむいて登ってたんですね(笑)
それでも一歩一歩進んでいけば、徐々に道が細くなり
この山初めての展望地に出ます。
突如現れた崩落地、思わず喜びの声を上げてしまうほど
テンションが上がりましたね~🙌
果てしない樹林帯の急登から解放され、アルプスムード漂う雰囲気に
一気に元気が湧いてきました!
ここからは上河内岳と聖岳が見ることができました👏
南アルプスは、現在でも年間3~4mmほど成長をし続けながら山体崩壊も起こしている
世界でも有数の成長スピードと崩壊速度の山脈です。
日本三大崩れのひとつ、大谷崩(おおやくずれ)も南アルプス山塊に属します。
👇大谷崩れを通った記事はこちら👇
崩壊地まで出れば、あとは次の目標であるピークは近いです!
また樹林帯に入って、残る力を振り絞って登り続けると
布引山(ぬのびきやま)に到着です!
展望が開けてから少し元気が出たからといっても
もう限界でした(笑)
とはいえここで引き返したらこれまでの努力が全て水の泡に、、
布引山で大休止を取って、最後のピーク「笊ヶ岳」を目指します!🔥
布引山山頂近くには、テント適地もありますので
テント泊で行かれる際は、桧横手山か布引山を幕営地に選ぶ方が多いでしょう。
布引山からはこの登山で初(?)の下りとなり、少し標高を落としてから
笊ヶ岳へと登ることとなります。
やっぱり登山って下りが楽しいわ😂
そしてようやく、本当にようやくです、笊ヶ岳が目の前に見えてきました!
左のピークが大笊(山頂)で、右のガスがかかっているピークが子笊になります。
山頂付近はガスッてきましたが、展望の事よりもこの時は
山頂が近づいている喜びの方が大きかったです。
布引山と笊ヶ岳の鞍部まで下れば、ここから最後の登り!
笊ヶ岳は山頂がぎりぎり森林限界を越えるので
山頂直下になると開けてきます。
ここまで来ればもう目の前
笊ヶ岳(2628 m)に到着です!
激闘でした~!👏
山頂まで約7時間ほどでしたが、ここまで登り一辺倒の苦しい7時間は初めてでした😅
県境となるので、山頂には静岡県の山頂標識もあります。
その後ろには南アルプス南部の主峰たちが並ぶのですが、ガスっていたためその姿は見えません。
笊ヶ岳から北側には白峰南嶺が続き、遠くに笹山や白峰三山がありますが
こちらも展望を望むことはできませんでした。
いつかは白峰南嶺の踏破をと目論んでいるのですが
まだまだ先の話になりそうです。
そして笊ヶ岳といえば山頂(大笊)から見る
小笊と富士山が並ぶ景色なのですが、こちらの方角も
残念ながらガスッてしまい、その景色を見ることが叶わず。
写真提供:山の友人 Kさん
晴れていればこのように、子笊越しの富士山を見ることができます。
双耳峰である笊ヶ岳ならではの景色でしょう。
ちなみに山頂から子笊までは往復で約30分のコースタイムでしたが
疲れ果てて下山一択でした。
下山は雨に降られながらも、まだ明るいうちに老平まで戻ることができました。
ここまで読んでいただいた方には
笊ヶ岳はとても長く苦しい山
という印象しか与えない内容となってしまいました。
登った私もやはり苦しかったといった感想しか思い出せないほど、心身共にハードな山行となりました。
しかし笊ヶ岳を愛する岳人は意外にも少なくありません。
私は山頂からの景色も見ることができず、この山を楽しむ余裕も持つことができませんでした。
もう来たくないと思いながら登り続けましたが
このブログを書きながら感じるのは、笊ヶ岳には大きな宿題を残したということ。
笊ヶ岳の魅力を見つけるために、またいつか登りにいかなければならないと強く感じました。
でもきつすぎるよ、笊ヶ岳~!😇
笊ヶ岳 登山まとめ
【標準コースタイム(目安) 16時間05分】
老平駐車場ー1:40ー広河原ー3:40ー桧横手山ー2:30ー布引山ー1:20ー笊ヶ岳(登り9時間10分)
笊ヶ岳ー1:20ー布引山ー1:40ー桧横手山ー2:20ー広河原ー1:35ー老平駐車場(下り6時間55分)
【アクセス(老平駐車場)】
・車
最寄りの高速ICは静岡側からは中部横断道「下部温泉早川IC」、甲府側からは「中富IC」となる。
早川町の南アルプス街道、県道37号線から雨畑大島線の西山温泉・早川方面へ直進、道なりに進み早川町役場を過ぎた先で県道810号線の雨畑・山伏峠方面へ左折する。
雨畑湖畔を進み馬場隧道をくぐったすぐ先を老平入口方面へ右折、老平地区に入りY字路を左折した先にある笊ヶ岳登山案内図の前の一角が駐車スペースとなっている。
・公共交通機関
下部温泉駅7:26始発の「身延駅~奈良田温泉間の早川町乗合バス」に乗り、大島バス停に7:55着。
ここから早川町予約制乗合タクシー(運行は角瀬タクシー)で老平まで約10分で到着。
乗合タクシーの予約は前日の午後7時まで。詳細は早川町役場へ。
【アドバイス】
登山レポ本編でも書いてある通り、コースタイムは往復16時間の長丁場となる。
日帰りでチャレンジされる方は、日の長い5~8月の季節で、日の出前から歩きはじめる山行計画をたてるのがいいだろう。
テント泊で行かれる場合のテント適地は、4つのポイントが挙げられる。
・広河原(河原沿いではなく登りが始まる登山道側の少し高い場所に、少しだけ平らな場所有)
・桧横手山 山頂周辺
・布引山 山頂周辺
・笊ヶ岳 山頂直下
広河原以外は水を担ぎ上げる必要があるが、広河原泊だと山頂往復するまでかなりの時間を要するので
1泊2日の行程なら、桧横手山以上で幕営するのがおすすめ。
危険個所は老平~広河原間のトラバース道。ガレ場の通過や危険な鉄橋などがあるので、危険個所通過の際は、必ず一人ずつ渡るように。
また広河原は水量によっては渡渉が必要になる場合もあるので、前日までの降水量も考慮する必要がある。
笊ヶ岳はやはり体力面でのハードルが高い。
広河原から布引山までは、休む間も与えない急登が続くが、序盤から飛ばし過ぎるとすぐに足がもたなくなるが、ペースを落とし過ぎても日没の時間が気がかりになる。
山の神、ワイヤー放置場所、桧横手山、布引山とチェックポイントで休むことを考慮しながら、無理のない範囲で歩き続ける意識が必要となる。
本編では触れてないが、帰路の笊ヶ岳~布引間の登り返しも疲れた体には堪えるので
とにかく早出を心掛けて、余裕を持った山行計画をたてましょう。
0コメント