【山百チャレンジ37座目 仙丈ヶ岳】南アルプスの女王。美しいカールと稜線に魅せられて【アサヨ峰/仙丈ケ岳 後編】

北沢峠からアサヨ峰へ登り、長衛小屋に泊まった一日目。


今回は同じく北沢峠から仙丈ヶ岳へ登る、アサヨ峰/仙丈ケ岳 後編です。 前編はこちら👇


仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)は、南アルプス北部に位置する標高3,033mの高峰です。

北に屹立する雄々しい甲斐駒ヶ岳に比べ穏やかな山姿で、女性定期な印象を受ける事から

南アルプスの女王と謳われています。

仙丈ヶ岳を構成する3つのカールと3つのピークが、穏やかな印象を与えているでしょう。

氷河の浸食によりできる「カール」という地形、藪沢カール、大仙丈沢カール、小仙丈沢カールがあり

山頂を挟んで南北に小仙丈ヶ岳、大仙丈ヶ岳のピークが並びます。


そのため一つの山として見ても山体が大きく、登ってみればこの山だけでも

雄大な景色を眺めながら稜線歩きが楽しめ

また稜線上からは広大なカールと、そこに咲くお花畑も待ち構えていて

夏山シーズンは多くの登山者を魅了しています。

スケールの大きな南アルプスにおいては、日帰り登山が可能で危険箇所も少ないことから

仙丈ヶ岳は同エリアの中では人気を博しています。

とはいえ北沢峠からの往復で、コースタイムが約7時間。

夏山シーズンという事もあり、朝早いに越したことは無いでしょう。


僕たちは前日にアサヨ峰を登って長衛小屋に泊まっているので

早朝に出発することとしました。


それでは「アサヨ峰/仙丈ケ岳 後編」、仙丈ケ岳の登山レポートをどうぞ!  


【登山レポ①】

長衛小屋ー仙丈ヶ岳二合目ー藪沢大滝の頭ー小仙丈ヶ岳


ザックを背負って長衛小屋の扉を開けたのは午前4時過ぎ。


良い景色を見るためには、夏山シーズンはとにかく朝早く出発するのが吉。

山小屋泊のメリットを活かして、早い時間に稜線へ出れるように動きだしました。

長衛小屋から南アルプス林道へ上がり、バス停のある北沢峠まで上がらず

林道途中にある「仙丈ケ岳二合目コース入口」から山道に入りました。


こちらのルートの方が二合目合流地点まで、緩やかに標高を上げる登山道になるので

長衛小屋からスタートする方は、こちらの道を選んだ方がいいでしょう。

すぐに展望が開けた場所が出てきて、ここから日の出前の北岳を見ることができました。


雲一つない快晴ですね~!

二合目までは斜面に付けられたトラバース道を登っていきます。


とても歩きやすく、登りも下りもこの巻き道のほうが早いかもしれません。

そして二合目に到着です。


ここからメインルートと合流し、ここから仙丈ケ岳への本格的な登りが始まります。

仙丈ヶ岳の登山道ですが、もちろん登りが続いていくとはいえ

急登はしっかりと道を九十九に切っていたり、ハードな急登というところは少なく登りやすいです。

朝日が出てきましたね。

ここから3~4時間がゴールデンタイム、澄んだ夏空と山の景色が見れる時間帯です。

黄金色の陽光が森を覆いました。


静けさのあるトウヒとコメツガの森も、この瞬間は活き活きと輝いて見えます。

息が上がってくれば立ち止まって後ろを振り返りましょう。周りに高峰が多いので

樹林帯の中にあっても、木々の間から垣間見える事が多いです。


進行方向に対して後(北側)を見れば、甲斐駒ヶ岳が木々の間から見えてきました。

足もとに目をやれば、こちらも朝日に照らされた瑞々しい苔。


母子ともに苔好きという点で共通しているので、二人して苔鑑賞と称した小休憩を取りながら登ります。


階段を越えれば三合目へ到着。

4合目までもいいペースで進み、急登区間も相変わらず付いてくる母。


母にとっては慣れない高峰登山、しかも2日連続ですが2日共にしっかり付いて来てくれました。

我が母ながら、なかなかやりますね~(二回目)

「藪沢大滝の頭」に到着しました。

ここは小仙丈ケ岳へ向かうルートと、馬の背ルートの分岐となる場所です。


一刻も早く小仙丈ヶ岳へ出て、森林限界を越えた稜線からの景色を見たい私たちは

小仙丈ヶ岳ルートを選択しました。

ここからまた斜度が上がり、足もとも岩が目立ってきました。

標高も高くなってきて、徐々に大きな木が少なくなってきたので、振り返ってみれば

どでかい甲斐駒ヶ岳~!!


甲斐駒ヶ岳の南に前衛として聳える、花崗岩の巨大な岩峰「摩利支天」も大きく見えます。

甲斐駒ヶ岳だけでなく、もう少し先に進めばハイマツ帯になるので

さらに展望が開けるでしょう。

6合目に到着です!

まだまだ雲一つない青空が広がる時間に登って来れたので、ここで大休止としました。


先に見えているこんもりとした山が小仙丈ヶ岳です。

6合目からは樹林帯の登りから解き放たれて、この青空の下を歩きますよ~

甲斐駒ヶ岳、そして鋸歯状の荒々しい山姿を見せる鋸岳を背に、開けたハイマツ帯を登ります。


疲れが出始める頃でしたが、このスケールの大きさを前にすればテンション上がるでしょう~

甲斐駒ヶ岳だけでなく、鳳凰山に北岳などの南アルプス北部オールスターの山々も

見てくれと言わんばかりに、存在感ある姿を望むことができます。


更にはその奥に富士山も

小仙丈ヶ岳直下まで良く登りました!

この岩場を上がれば、、

小仙丈ヶ岳に到着です!


2,864mのこのピークから、仙丈ケ岳の雄大な小仙丈沢カールを見ることができます

そしてこの小仙丈沢カールを抱く仙丈ヶ岳の山頂へ向かって、この稜線を歩けるなんて

最高じゃないですか~!


仙丈ヶ岳は山から山を繋いで歩く稜線歩きが、一つの山の中で味わえるのが醍醐味の一つだと思うんですよね。

小仙丈ヶ岳からはさっきまで隠れて見えなかった間ノ岳や

仙丈ヶ岳から続く仙塩尾根の先、塩見岳も見ることができました。

万歳してるけど、これで終わりやないよ(笑)


これから仙丈ヶ岳登山の本番が始まります!



【登山レポ②】

小仙丈ヶ岳ー仙丈ヶ岳ー北沢峠


大展望の小仙丈ヶ岳を後にし、いよいい仙丈ヶ岳山頂へ歩き出します!


小仙丈ヶ岳で展望を楽しみすぎて(はしゃぎ過ぎて)、気づけば20分ほどゆっくりしてしまいました。

ずっと景色がいい道を歩くもんだから、歩き出してもカメラを取り出しては止まり

なかなか前に進みません(笑)

岩場を下れば8合目。

8合目からの登りが、仙丈ヶ岳登山の中でも最もきついパートかもしれません。


これまでの疲れと3,000mに迫る標高が、体に重くのしかかります。


そんな時はゆっくり、そして立ち止まりながら登りましょう。

こんな天気に恵まれているのに、急いで登っちゃうなんてもったいない。

さっきまでいた小仙丈ヶ岳も低くなってきた。

岩場の苦手な母は、へっぴり腰で登ります(二回目)

仙丈小屋への分岐、もちろん山頂方面へ向かい

カールを横目にもう少し頑張って登れば

山頂を捉えました!

これまた山頂まで気持ちよく、いや美しく伸びる登山道。


もう少しで終わってしまう寂しい気持ちが湧いてくるくらい

いつまでも歩いていたい美しい稜線、やはりこれが登山者の多くを惹きつける

仙丈ヶ岳の魅力でしょう。

ガスが湧いてきましたが、もう焦ることはありません。


頂稜が西へ向いてくれば、山頂は目と鼻の先です。

大仙丈ヶ岳への分岐を越え

最後のひと登りを越えれば  

仙丈ケ岳(3,033m)に登頂です!


アサヨ峰では置いて行ってしまったけど、仙丈ヶ岳は2人で一緒に登頂です。


山梨在住で山に関する仕事をしている私にとっては

また今後も足繁く通うであろう仙丈ヶ岳ですが

京都に住む母にとっては仙丈ヶ岳の山頂に立つのがこれで最後かもしれません。


この晴天の中で登れてほんとに良かったね!

僕にとっても母にとってもかけがえのない思い出になりました。

ガスが湧いてきましたが、昨年二人で登った北岳は最後まで私たちに姿を見せ続けてくれました。

今まで登ってきた道のりを振り返ることができるのも、アルプスの魅力の一つですよね。


山頂でゆっくりと周りの山の眺望、歩いてきた道のりを眺めていると

この展望だけでなく、更にアルプスの魅力である"あの生き物"にも出会うことができました。

ライチョウ、しかも親子で登場です!

お母さんの上に乗る雛が可愛い~


南アルプス山域の中でも、仙丈ヶ岳は見れる確率が高いので

山頂周辺、仙丈小屋、馬の背周辺を探してみるといいかもしれませんよ。

※登山道外には足を踏み入れず、こちらからライチョウに近づきすぎないようにしましょう。

奇しくも親子登山中にライチョウ親子との巡り合わせ、オカンもラッキーだね~

雛たちも無事にこの冬を乗り越えてほしいです!


まだ朝の9時頃だったので、ライチョウの撮影会で時間をしっかり取り

ここから下山を開始します。

帰路は二合目まで同じ道を辿り、北沢峠に戻ります。

時刻は11時40分、北沢峠に無事に到着しました。


帰る途中から仙丈ヶ岳にも雲がかかり、あれだけ気持ちのよい稜線も白い世界に変わっていきました。

やはり早出早着で正解でしたね。

これにてアサヨ峰/仙丈ヶ岳編は終了です。


山梨百名山の高峰2座を登ることができましたが、雪に閉ざされる前に登らなければならない

高峰の山はまだまだ残っています。

とはいえ北岳/小太郎山編に続き素晴らしい山行が続いたので、これからアップする

晴れ男綾井の山百山行レポートも、引き続きお楽しみにお待ちください!


アサヨ峰 仙丈ヶ岳 登山まとめ 

【今回の山行記録】

山行時間:1日目 4時間22分、2日目 7時間31分 

 距離:1日目 4.08km、2日目 8.88km

二日間合計:上り
1,916
m、下り
1,865
m


【標準コースタイム(目安)】 

アサヨ峰 5時間50分

長衛小屋ー2:05ー栗沢山ー1:05ーアサヨ峰ー0:55ー栗沢山ー1:45ー長衛小屋


仙丈ヶ岳 6時間45分

長衛小屋ー0:35-二合目分岐ー1:05ー藪沢大滝ノ頭ー1:00ー小仙丈ヶ岳ー1:05ー仙丈ヶ岳

仙丈ヶ岳ー1:00ー小仙丈ヶ岳ー0:45ー藪沢大滝ノ頭ー0:45ー二合目分岐ー0:30ー北沢峠


【アクセス(北沢峠)】

北沢峠まで山梨県側・長野県側より山梨県営南アルプス林道・伊那市営林道南アルプス線がそれぞれ通じているが、マイカー規制により一般車両(自転車も含む)の通行が通年禁止されている。

山梨県側の山梨県営南アルプス林道は崩落の影響で、2023年度も通行止めとなっていて

伊那市営林道南アルプス線のみでしか北沢峠までアクセスできなかったが、2024年以降の情報は

山梨県林道情報や山梨交通株式会社(登山バス)を随時確認。


・車

自家用車利用の場合は、仙流荘前から南アルプス林道バスに乗り換える必要がある。

仙流荘へは中央自動車道伊那ICから約40分、もしくは 諏訪ICから約50分。

バス停近くに有料駐車場「仙流荘駐車場」あり。

・公共交通機関

 公共交通機関利用の場合は、最寄りの鉄道駅から峠まで直通する交通手段はないので、路線バスを乗り継いで峠まで行くことになる。

JR東海飯田線 伊那市駅から駅前の伊那バスターミナルに移動、バスターミナルから高遠駅までバスで移動し、高遠駅からはタクシーを利用する。

高遠駅から仙流荘前までの路線バスもあるが、平日のみという点と乗り換えがあるという点から、タクシーで行くのがオススメです。


【アドバイス】

アサヨ峰を長衛小屋から往復の場合、長衛小屋以降は山小屋や水場は無い。

長衛小屋でトイレや補給を済ませておく必要がある。


栗沢山直下から森林限界を越え岩場も出てくる。

特にアサヨ峰直下の岩場は鎖場もあり急角度なので、下りでは特に注意が必要。


コースタイムは長くなるが、長衛小屋から仙水峠経由でも登ることができる。

アサヨ峰まで足を延ばす場合は、登山レポ本編のコースがおすすめだが

栗沢山だけの場合や、健脚の方は登りで仙水峠経由のルートを選択してもいいだろう。


仙丈ヶ岳へは、北沢峠もしくは長衛小屋から小仙丈尾根往復(小仙丈ケ岳)の場合は山小屋は無いが

山頂直下の仙丈小屋や、藪沢大滝ノ頭から藪沢小屋や馬の背ヒュッテに立ち寄ることは可能。


北沢峠もしくは長衛小屋から日帰りで登る場合、コースタイムが7時間近くなるので、早出することが肝要。

登山道上に危険個所はほとんど無いが、森林限界を越える3000m級の山になるので

急な天候悪化リスクも考慮したい。