【山百チャレンジ20座目 笹山】標高差2,000mを駆け上がる!!山百四天王の一座へ

山梨百名山チャレンジ担当の綾井です。


このブログを書いている日にも、エルク出勤前に行ける山へ朝早く向かったのですが、林道のゲートが閉まって登山口までたどり着きませんでした…

山梨百名山は事前の情報収集が大事ですよ、ほんと、とほほ🥺

今回の山百ブログは、南アルプス(赤石山脈)山域の「笹山(ささやま)」です!


笹山は白峰三山最南端の農鳥岳から南へ延びる尾根、白峰南嶺(しらねなんれい)の尾根上に位置します。

白峰南嶺は南アルプスの主稜線からは外れていて登山者は少なく、この尾根に位置する山は静かな山歩きを楽しめます。


静かな山歩きを楽しめるというと聞こえはいいですが、不人気な分アクセスが悪かったりハードな山が多かったりと、通好みな山々がほとんどです(笑)

もちろん今回の笹山も例外ではありません。


笹山は山梨百名山の中でも、登頂が難しいとされる4座(山梨百名山四天王)の一つに数えられ、日帰りながらハードな山行を覚悟しなければいけない山です。


四天王、中二病くすぐられるその4座(僕はポケモン世代です)は

笹山、笊ヶ岳、鋸山、鶏冠山

です。この4座が選ばれた理由は

技術的難易度が高い もしくは

体力的難易度が高い

この二つのうちどちらか一つに当てはまる、もしくはどちらもあてはまる山という事です。


四天王の中でテクニカルで危険度が高いグループが鋸山、鶏冠山で

体力的にタフなグループが笹山、笊ヶ岳と分けることができるでしょう。


笹山は早川町の奈良田集落から標高差2,000mを一気に上り詰めなければなりません。

休憩時間を考慮しないコースタイムは11時間40分。


さらに途中営業小屋がある訳でないので、このロングコースを野営をするか(野営の場合水を持ち上げるのが大変ですが)日帰りで登って来なければなりません。


このコースは笹山ダイレクト尾根と呼ばれていますが、この尾根に道が付けられる前は更に登頂が困難だったようです。


ちなみに笊ヶ岳の場合は標高差は笹山とさほど変わらないものの、距離がさらに伸びます。

日帰りでとなれば四天王最強クラスのハードさをほこります。


せめて途中に絶景スポットがあれば精神的にもいくらかましだと思うのですが、笹山や笊ヶ岳にいたっては山頂に着くまでず~っと樹林帯のなか。

果てしなく続く急登、それでいてご褒美が最後の最後というのは、これぞ南アルプスの山って感じですよね(笑)


笹山の前情報はこんなところでしょうか。

脅し文句ばかり並びましたが、個人的には好きな山域でよく足を運んだ思い出の山でもあります。


それでは登山レポート本編をご覧ください!


【登山レポ①】
急登を笑顔で登る、大型新人しげる君

奈良田湖 塩見橋(05:33)-水場入口(07:02)-2256m地点(08:29)-笹山 南峰(09:34)


やってきたのは早川町の奈良田集落

塩見橋という吊り橋脇に駐車場があり、ここに停めて吊り橋を渡って登山口まで向かいます。


早川町は山梨県の南西の端、静岡県との県境に位置し、南アルプスの山懐に抱かれた山村です。

96%を山林が占める「やまだらけ」の町で、また人口は932人(2022年7月現在)と「日本で最も人口が少ない町」としても知られています。


そんな早川町の中でも秘境とされるのが早川町の最深部にある奈良田集落で、一般車両の通行はこの集落で行き止まりとなるなかなかの秘境っぷり。

長い行程になるので早朝の5時半出発です。


吊り橋は高所恐怖症の方にとっては怖いかもしれませんが、しっかりとしているので多少揺れても安心感がありますよ。

発電所の脇を通って登山口を進みます!

吊り橋から歩いて約10分、笹山登山口に到着です。

ここから長い長い一日が始まります。


今回はエルクの大型新人松崎(愛称:しげる)との二人パーティです。


しげる君は山梨に引っ越してきたばかりのクライマーなので、山梨百名山の山にはほとんど登っていませんが、この山行前には鶏冠山に登っていました。

せっかくなら山梨百名山四天王を先に登りたいという、血気盛んな山屋さんでもあります。


さて登山口からいきなり現れるのが

笹山の最初の難関、九十九折の急登です😱


この上の送水管まで手すりが続いていて、いきなりふくらはぎをパンパンにさせます(笑)

そんな急登をもろともせず、しげる君は先輩を置いてグングン進みます。


中込店長も含めエルクスタッフの中でも体力、そして登攀力もNo.1の彼。

これからも大変な山に連れて行って荷物をふんだんに持たせてやろうと、登山開始後すぐに思った綾井でした。😑

送水管上まで到着。ここで急登九十九折地獄は終わりを迎えますが、ここは笹山、このまま尾根の急登が始まります。

送水管上からがダイレクト尾根と呼ばれる、笹山南峰までまっすぐ伸びる尾根の登りが始まります。

そんな登りもしげる君は楽しく登り続けます。


あまりにもいい顔するので、この日の被写体はしげるメインでいきます(笑)

次の目標地点となるのは「水場入口」。


飛ばしすぎず、とはいえ遅くなりすぎないように、淡々と標高を上げていくことが笹山登山の登り方です。

途中に平坦になるところはありますが、その区間もすぐに終わってしまいます。

ここで足を休めながら、まだまだ先が長いので進みますよ~

広葉樹林帯に入れば、明るい尾根なります。


標高差が2000mもあれば山の植生変化はよく分かります。

里に近い場所では植林地帯、そこから広葉樹林帯に変わり、針葉樹林帯へ。

そして森林限界に近くなればハイマツ帯へと移り変わります。


笹山で登山の喜びを見出すのであれば、植生の変化を観察しましょう。

開けた景色を楽しむ心は、この山ではそっとしまっておいてくださいね😇

水場入口に到着です。登山開始から1時間半と、かなりハイペースで来ました。

ここでこの山行初の休憩を入れました。

休憩スポットとしては、送水管上、地形図上の1344m標高点、水場入口、崩壊地、窪地(テント適地)と続きます。


我慢の山ですので、山行計画に休憩スポットも組み込んで、計画的に登っていきましょう

水場はここから往復30分ほどの場所にありますが、今回はスルーしました。

標識には往復20分と書いてありますが、さすがにもう少し時間がかかったはずです。🤔


以前は入口にここまでピンクテープが無かったのですが、分かりやすい道になっていますね。

ここからも長いので、水を多く消費してしまっている場合は、ここで補給していきましょう。

登山において「登りが好き派」「下りが好き派」に分かれると思いますが、皆さんはいかがでしょうか。


山の喜びを感じられる最高潮のピークを迎える山頂までが、僕はやはりテンションが上がります。

そういった意味では僕は登り派なんですが、笹山は登り派にはぴったりの山でしょう。

しげるも急登でもこの笑顔、登り派ですねきっと🤭

登って登って登って…次の決めている休憩スポットへ。

その場所は笹山道中で唯一の展望スポット

崩壊地に到着です。

笹山でどうせ休憩をとるなら、ここは外せないでしょう~👏

しげる君にあれが北岳、あれが鳳凰三山と教えてあげると、すごく興味津々で聞いていました。


まだ行った事ない山を初めて行った山から眺め、その山に行く日のことを思うとワクワクが止まらないよね。

僕にとってその感覚は南アルプスに対しては失われましたが、彼の感覚が羨ましいと思うし、これからの山梨の山ライフを存分に楽しんでほしいとも思います。

崩壊地からすぐ上に上がれば標高2256m地点となります。


笹山山頂は2718mなんで、ここからが後半戦、脚に疲れがくるところですが、頑張っていきましょう!

標高2256m地点からまた50mほど上がれば、窪地になっているキャンプ適地に到着です。


笹山は営業小屋が無いので、一泊で挑む際はこの場所や、山頂近くのキャンプ適地での幕営をする方が多いです。

ロングコースを日帰りで行くのか、重い荷物と水も持ってテント泊で来るのか、迷いどころですよね~

窪地からは密林の中に付けられた細いトレイルを登っていきます。

窪地から上は道も分かりにくい場所が出てくるので、ピンクテープなどを見逃さないように進んでいきます。

登ったのは5月16日と、まだ残雪のある時期となります。

窪地からは雪がありそれが腐っているので、この区間はかなり苦戦しました。

登って登ってようやく山頂が見える開けた場所に出てきました。

ここまで来れば後わずか、天気もいい感じです!

残雪のため最後の最後でルートを見失い、ハイマツを強行突破しました!

もちろん特攻隊長のしげる君に突破してもらいます(笑)

ハイマツを抜ければまた開けた場所に。

ここから振り返れば

富士山がばっちりです!

山百で何度も何度も富士山の姿を見ていますが、笹山は最後の最後に見れるので、富士山でも喜びはひとしお。


富士山を撮っていると大きな声で

「綾井さ~ん!」の声が

満面の笑みで導いてくれるしげる君。

そうそう、このハイマツを抜けたら山頂はすぐそこだもんね。

笹山南峰(2,718m)に到着です!


ここまで吊り橋から約4時間で到着、やっぱしげると行けば早いね~。

南峰からは白峰南嶺の稜線、奥の北岳まで見えます。


ここの展望もいいのですが、より標高が高く展望もいいのは笹山の北峰なんです。

山梨百名山の標柱は南峰にありますが、せっかくなら北峰までいきましょう!

北峰までは一度樹林帯へ入って10分ほどで着きます。


笹山のご褒美をいただきにいきましょうか!



【登山レポ②】
北峰のパノラマと長い下山路へ

笹山 南峰(09:36)-笹山北峰(09:45)-休憩-笹山北峰(10:20)-水場入口(12:00)-奈良田湖 塩見橋(13:08)

この樹林帯区間も雪がたっぷり残っていました。

例年6月までは残雪があるので、入山の時期によっては軽アイゼンの用意が必要です。

樹林帯を抜ければ、長い笹山の行程の最後の最後

笹山北峰(2,733m)に到着です!

北峰からは、南アルプス南部の塩見岳荒川岳の大きな山容を間近に見ることができます。

山梨百名山の同じ四天王に挙げられる笊ヶ岳の双耳峰や

鳳凰三山北岳など、南アルプス北部のスター峰も見ることができます。


5月の高峰はまだまだ残雪期。

雪の被ったアルプスの山々は、夏山よりも荘厳な印象を与えます。

しげる君もこの山々を見て何を想うのか。


同じく山が好きで山梨に移住した彼には、僕よりもどんどん山梨の山に登ってほしいですね。

ここから下山は同じ道を辿って帰ります。

すぐに樹林帯に入るので、この景色を目に焼き付けて帰りましょう。

窪地までの区間の下山はやっかいで、道が狭い密林に残雪とかなりテクニカルな道となっていました。


残雪が無くなる6月以降が一般的な登山適期といえるでしょう。

下山中気になったのは苔の美しさ。


山百企画が終わったら、ゆっくり白駒池の苔観察トレッキングに行きたいと思う綾井です(笑)

針葉樹林帯、落葉広葉樹林帯、常緑広葉樹林帯と登りとは逆の順番で、日本の山の森林分布の変化を楽しんで

手すり区間に戻ってきました!

膝痛持ちの僕はすっかり下山で足を引っ張ってしまいました、、(しげるが早すぎた😅)

そして奈良田湖に戻ってきました!


約7時間半の山行時間となりましたが、一般的にはかなり早い部類に入るので、参考タイムは最後の笹山まとめでご確認ください。


笹山はこれで何度目だろうか、ここも何度も通った山の一つです。


黙々と登る山なので、自然と、そして自分と対話をしながら、山とブレずに向き合える気がするんですよね。

マイナーな山がいいとは言いませんが、笹山のように静かな南アルプス山域がやはり好きだなと、改めて感じた山行でした。


笹山に通う理由にもう一つ、下山後の立ち寄りスポットの存在が大きいんですよね。

笹山の立ち寄りスポット、登山情報まとめも最後まで良ければ読んでくださいね~



笹山立ち寄りスポット


奈良田の里温泉(女帝の湯)

登山者だけでなく、秘境温泉として多くの方が訪れるのが奈良田温泉なんです。

日帰り温泉で利用できるのはここ「奈良田の里温泉」と、「白根館」です。

どちらも優劣は付けれませんが、今回は女帝の湯を利用させていただきました。

奈良田温泉の歴史は古く、奈良時代には存在していました。 奈良時代、天平年間の一時期に即位していた女帝・孝謙(こうけん)天皇が病気療養に逗留した史実も残っています。 その際、孝謙天皇が「この地も真に奈良だ」としたことが、「奈良田」の名前の由来になったと伝わります。

孝謙天皇に由来する、女帝の湯は、温泉総選挙うる肌部門全国第3位に選ばれた実績もある温泉です。

奈良田温泉はぬるぬるとした肌触りが気持ちのいい温泉で、うち湯だけのシンプルな温泉施設ですので、ゆっくりと温泉を楽しみましょう。

ゆっくりと楽しまざるを得ない理由があり、ここの温泉はぬるいです。


じっくり何時間でも入れるくらいの温度になっているので、ゆっくり入ってお肌をつるつるにしていきましょう。



笹山まとめ

【今回の山行記録】

山行時間:07:37 距離:12.8 km

登り:1,931 m 下り:1,940 m


【標準コースタイム(目安) 11時間40分】

奈良田湖 塩見橋ー0:55ー送水管上ー1:50ー水場入口ー2:20ー窪地(テント適地)ー1:30ー笹山 南峰ー0:10ー笹山北峰

笹山北峰ー0:10ー笹山 南峰ー1:00ー窪地ー1:45-水場入口ー1:25ー送水管上ー0:35ー奈良田湖 塩見橋


【アクセス(奈良田温泉)】

・車

甲府南I.C. →笛吹ライン(国道140号)→国道52号→身延町『飯富』交差点を右折→早川町(35Km/約60分)


・公共交通機関

中央線甲府駅 →(身延線)→身延駅→早川町乗合バス「奈良田温泉行き」→町内バス停他

下部温泉駅 →早川町乗合バス「奈良田温泉行き」→町内バス停他


【アドバイス】

笹山は標高差約2000m、コースタイムにして約12時間とハードなロングコースとなります。

スピードに自信が無く日帰りで臨まれる場合は、日の長い5~7月がおすすめです。

例年は5月から6月の早い時期には残雪があります。


テント適地は約2300m地点の窪地や南峰と北峰の間のコルなど、いくつか点在はしていますが、管理されているキャンプ指定地ではございません。

環境保護とマナーを考え、最大限の配慮が必要です。


途中水分補給できる場所は、水場入口から15分の場所しか無し。

渇水期には水流も細く、涸れている可能性があるので、水は初めから多く持っていくのが無難でしょう。


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活用方法はジオグラフィカなどで活用していただけます。

続いての山行記録はこちら👇