【小太郎山西尾根 2018/10/30.31】南アルプスの特等席へのダイクレクトルート

南アルプスのシーズンは間もなく終わります。甲府駅や芦安から広河原へのバスは11月4日が最終運行になります。広河原や北沢峠へ行かれる際は事前の確認を必ずしてから、向かってくださいね。

さて今回のフィールドレポートは、スタッフ綾井がシーズンラストにもう一度北岳肩の小屋へ挨拶へ(というより遊びに)行こうと計画。そこでその行程を小太郎山へ直登する隠れたルートを経由して行こうというものです。

小太郎山から西へ長く伸びるこの尾根を、野呂川を渡ってから詰めるこのルート。単独になりますが地図を見る限りきつい急登はなく、すっきりとわかりやすい尾根です。

小太郎山への一般登山道は、北岳へ登るルートの草すべりか右股コースから小太郎尾根にのっこし、標高を下げながら向かう道ですね。


さて西尾根への取り付きは広河原と北沢峠の間にある「野呂川出合」のバス停を降りてから向かいます。ここから少し両股小屋方向へ林道を歩きます。

この小屋の後ろから野呂川の谷に降りるのですが

テープあるんです。踏み跡&道らしきものも。作業員か釣り人か、もしくは南アルプスをこよなく愛する人がトレースをつけたか。安心感が増しますが、冒険感は薄れちょっと残念。

野呂川へ降りると対岸へ渡ってから取り付きます。川幅は狭いところで10mもありませんが、10月末の朝の冷え切った沢水に入るの勇気いります…。僕は銭湯の水風呂すら入れないん弱小者なんです。

しかしここを渡らなければ登山が始まらない!バランス保持のポールと、こけた時に備えてヘルメットを装着しいざ入水!

水の深さを写真にとるつもりが、痛すぎて対岸へ即アウト。深いところの水量は膝上ほどでした。でも冷水に浸かった後のなんともいえない気持ち良さ、水風呂の良さはこういうことなんでしょうか。

「尾根の隣に尾根は無し、沢の隣に沢は無し」。地図読みの達人三上ガイドがよく語られるお言葉です。この顕著な沢の南岸が今回の西尾根の取り付きです。

こういった一般道ではないルートの取り付きというのは大抵は崩れやすい急登になります。尾根に乗り上げてしまえば安心です。

倒木が多くありますが、尾根沿いに行けばいいわかりやすい道です。

尾根上には時折迫り出した岩が出てきますが、その時は少し巻けば回避できます。

とはいえほとんど人が入らない道。踏まれてないふかふかの土を歩くのは本当に気持ちが良い。

標高2200mくらいから尾根が大きく東へ曲がります。そこからは道が痩せていたり、時折大きな岩が尾根上で邪魔をしてきます。

標高を上げるとザラメ雪が陰になっているところで現れだしました。

一応危なそうな岩や藪が出てきたりすると地図を見て巻いたりしていたのですが、いちいち地図を見なくても迷うことのない分かりやすい尾根です。「もう全部直登してやる!」と、途中の岩へ乗っかると

北岳が見えてきた―!前日にも雪が降ったらしく、岩々しい北岳の白い姿の美しさといったら、まさに南アルプスのマッターホルン(マッターホルンを実際に見たことないですけど)。展望が開けここからはウキウキで、体が軽く感じました。

僕は玄人ぶることなく断言しますが、展望のないよりあったほうが楽しいと思います。「ピークを目指さなくても楽しい」よりも目標をもってピークを目指すほうが楽しいと感じるし、力が湧いてきます。

しかし稜線上はシャクナゲやハイマツが濃く、すぐに稜線から少し下りたところの展望のない山肌を沿って歩きます。稜線から離れないように、同じように標高を上げながら進みます。

藪が薄くなったとみて稜線へ顔を出すと、もう小太郎山がかなり近づいていました。このまま進みたかったのですが、また少し下りて頂上直下まで進みます。

頂上の方向に狙いを定めて、ハイマツ漕ぎを再スタート。ハイマツって下に向かって伸びてるから、登りでは少しやっかいなんです。

お、あと少しかな

抜けた!

小太郎山(2715m)に到着です。山梨百名山のひとつでもあり、僕も大好きなピーク。

ここはちょうど南の北岳・東の鳳凰三山・北の甲斐駒ケ岳・西の仙丈ケ岳の中間に位置します。南アルプス北部のオールスターを等しく眺められる南アルプス随一の特等席です。

富士山もしっかりと見えるほど、澄み渡った空模様。

改めて北岳へ目をやると、ここだけが雪がしっかりとついています。日本第二の高峰は少し他の山とは条件が違うようです。

特等席からの眺めを十分に堪能したのち、南へ延びる小太郎尾根を北岳方面に向かいます。ここも肩の小屋に勤めていた時に何度か来たルート。

この尾根はそれまでの西尾根に比べて展望があって、ここからは一般道ですが夏でも静かなので大好きなルートです。

振りかえり見る小太郎山。この山は顕著なピークというより、言ってしまえば北岳から伸びる尾根上の小ピーク。行ってみないと魅力がわからない山かもしれません。

小太郎分岐を越えると様子が変わってきました。

日が当たらないところは凍ってすべりやすく、チェーンアイゼンが有効なコンディション。

この尾根上は西からの風がとても強く、エビのしっぽがしっかりとできあがっていました。

さて今回の登山の最終ピークは、肩の小屋です。先ほどピークがうんたらと語りましたが、小屋をピークにしてもいいんです!(言い訳💧)今夜もお世話になります!

夕食後に小屋のスタッフの田口さんとお酒を飲みかわしました。彼は今年にパキスタンのK2(8611m)へ登った山の先輩です。無事に帰って来て酒を一緒に飲めて本当に良かった。

翌朝小屋の気温計を確認すると-8℃…未明に小屋番さんが確認した時は-9℃まで下がっていたそうです。今季一番の冷え込みとのこと。

日の出はきれいに染まらなかったですが、2日目も良い天気。

さて山で二日目を迎えていますが、この日はエルクの出勤日。標高3000mからのエクストリーム出勤、定時に間に合わすべく急いで下山しました。

途中の雪田とよばれるところから見上げる北岳が好きです。また冬に来るかもしれませんが、とりあえず今シーズンはこれでおしまい。


さて北岳などばっかり行ってる南プスラバー綾井のフィールドレポートでした!

この時期のアルプスは冬へと日々移り変わっています。この記録だけを鵜呑みにせず、天気の確認と各々の力量を鑑みて無理せず計画を立ててくださいね。

PS 無事に定時には間に合いましたよ。

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