【山百チャレンジ22座目 長者ヶ岳】炭焼き長者と瓔珞(ようらく)ツツジの伝説

長者ヶ岳(1,336m)は富士山の眺望と比較的簡単に登ることができるとあって

ハイキングの山として人気の高い一座です。

東海自然歩道のコースの一部になっている為、道も整備されていてとても登りやすいのも人気の要因の一つでしょう。


長者ヶ岳は、山梨百名山チャレンジでは初めての天子山地(てんしさんち)に属します。

天子山地は、山梨県南部と静岡県北部にまたがり、富士山の西側、南アルプス山系や富士川の東側に連なる、南北に長い山地です。



さてこの長者ヶ岳には、山名の由来となった「炭焼き長者」の伝説が言い伝えられています。


炭焼き長者のお話は、身分の高い姫と結婚した炭焼きを生業としている男が、思いがけない財宝の発見でお金持ちになるという昔ばなしです。

北は青森県から南は沖縄県まで、各地に伝説として伝わっている。炭焼きの名を藤太あるいは小五郎と称している例が多いよう。

麓の田貫湖で伝わっている炭焼き長者の男の名は、藤次郎(とうじろう)と伝聞で伝えられた伝説なのか、他地域の名前と異なっているのも面白いですね。

長者ヶ岳の南に位置する「天子ヶ岳」では、炭焼き長者伝説に紐づいた「瓔珞(ようらく)ツツジ伝説」があり、これもまた面白いんです。

炭焼きと結婚したお姫様が

「自分が死んだら、都から被ってきた瓔珞飾りのついた冠を、都が見える高い山に埋めてほしい」と頼み、亡くなりました。
炭焼きは皇女の頼みを聞き、天子ヶ岳の頂上に冠を埋めます。
やがてその場所にちょっと変わった花をつけるツツジが育ちました。そのツツジは、皇女の冠の瓔珞飾りのような花だったので、「瓔珞ツツジ」と呼ばれるようになりました。

天子ヶ岳は、皇女が死んだとき瓔珞の冠を埋めたと伝えられるところで、山頂にはその瓔珞から芽吹いたと言う瓔珞ツツジがあります。


今回は田貫湖からスタートして、瓔珞ツツジを見るために天子ヶ岳を縦走、そして周回で帰ってくるコースをセレクト。

山梨百名山チャレンジ企画としては、山梨百名山に選定されていないとはいえ、伝説あるところには足を運びたいじゃないですか(笑)


そんな想いで選んだこのルート、天子ヶ岳へ行ってよかったのですが、少し後悔する事となりました…。

詳細は本編山行レポートをご覧ください!👇


【登山レポ①】
大沢崩れの大迫力、富士展望の長者ヶ岳へ

田貫湖北サイト駐車場(08:05)-田貫湖キャンプ場分岐(08:19)-休暇村分岐(08:54)-長者ヶ岳(09:47)

登山口である田貫湖北岸にある駐車場に着けば、早速富士山が出迎えてくれました。


車で来てこの迫力ある富士山の景色見れるんだから、山に登らなくてもいいんじゃないかって気分になります😅

もちろん登らないという選択肢は無い僕は、富士観賞を早々に切り上げ歩きはじめました。


田貫湖の駐車場から山の手方向に、東海道自然歩道の道標が建てられているので、道に迷う事は無いでしょう。

植林地の山すそに付けられた道を歩いてしばらくすると

尾根上の分岐にぶつかります。


長者ヶ岳の登山口は主に3つあり、登山口と書かれている方が田貫湖北岸でも東側に位置する登山口です。

僕は北バンガローサイトの表示の方の登山口から登ってきました。


どちらも駐車場がありますが、トイレがあるのは僕が登った北バンガローサイト方面の登山口だけです。

ここからは進行方向右手に自然林、左手に植林地となる尾根道を登っていきます。


このブログを書いている6月下旬では、既に新緑は深い緑に変わっているでしょう。

登った時はまだ青々しさが残る、きれいな新緑を見せてくれました。

東海自然歩道の標識が所々に設置されているので、山頂まで安心感がありますね。

分岐から登って約20分。

富士山への展望が開けた広場に到着です。


この先も富士山をみえる場所があり、また山頂からの景色の方が素晴らしいので、ここはそのまま進んでいきます。

休暇村富士へと下りることができる分岐点に到着です。


休暇村富士が三つ目の登山口といえるところで、どの登山口からでもそこまでコースタイムは変わりません。

斜度が緩やかな道になれば、山頂まで残り標高差が約300m。

ここからが長者ヶ岳登山の後半戦です!🔥

山梨百名山チャレンジを始めた3月から5月下旬にかけて、新緑や芽吹いたばかりの花が楽しめるのはもちろんですが、天気が安定しているのは本当に助かりました。


長者ヶ岳もそうですが、いい天気の中で歩く新緑のトレイルはとても気持ちがいいものです。



道志山塊の「今倉山」「菜畑山」は展望がほとんど無かったですが、新緑のシーズンだからこそ楽しむことができたと思います。

長者ヶ岳は新緑だけでなく、山頂からの展望があるので、人気のあるハイキングコースなのでしょう。


山頂からの景色を求めスピードを上げていけば、間もなく山頂標識が見えてきました。

長者ヶ岳(1,336m)に到着です!

山梨百名山の標柱の向こう側には、大きくそびえたつ富士山が👏

山頂から一直線に田貫湖、樹海、富士の姿を見ることができて、何といっても大沢崩れ(おおさわくずれ)を真正面で見ることができます。


大沢崩れとは、富士山の山体の真西面側にある大沢川の大規模な侵食谷のこと。

最大幅500m、深さ150m、頂上の火口直下から標高2,200m付近まで達する沢地形の崩壊地です。


富士山には五合目付近を一周する約25kmの古道、お中道(おちゅうど)という道があるのですが、大沢崩れは危険なため現在通行することができません。

お中道が通れるようになれば、個人的には必ず行ってみたいルートのひとつなんです。

田貫湖の名前にちなんでたぬきの置物が置かれている山頂広場。


富士山の展望に注目があるまりがちですが、富士山と反対側に少し移動してみれば

南アルプス方面の展望も開けています。

北岳も見えているけど、この写真では分かりにくいですよね🙇🏻

さてここからは瓔珞(ようらく)ツツジを見に天子ヶ岳へ縦走します!


【登山レポ②】
瓔珞ツツジと、長~い林道歩き

長者ヶ岳(10:04)-上佐野分岐(10:23)-天子ヶ岳(10:50)-休憩(~11:20)-天子ヶ岳登山口2(12:29)-休暇村富士(13:26)-田貫湖北サイト駐車場(13:39)

長者ヶ岳でゆっくりお昼ご飯を食べた後、むかうは瓔珞ツツジの待つ天子ヶ岳へ!


天子山地の名前の由来になった天子ヶ岳、ちなみにこの名前の由来は、離れた場所から見るとお城の天守閣に見えたからとの事。

まずは下り基調で進んでいきます。


周回コースではなく天子ヶ岳へピストンする場合は、また長者ヶ岳へ登り返すこととなります。

とはいえ周回コースよりも稜線を引き返した方が絶対おすすめです!理由は後程、、😑

上佐野分岐へ到着です。


ここは長者ヶ岳と天子ヶ岳のちょうど中間に位置する峠で、東海道自然歩道はここから西へ南部町方面へと下り「親思山」へと繋がっています。


東海自然歩道とはここでお別れになりますが、天子ヶ岳への道は変わらず歩きやすいですよ。

変わらず新緑のトレイルを進みますが、ツツジの花期は終わってしまい、落ちた花弁が道を埋め尽くしていました。


この稜線では同じツツジ科のシロヤシオの群生地でもあるのですが、シロヤシオの花期も過ぎてしまったかと落胆していたところ


1本だけ花が付いたシロヤシオの樹を確認することができました!

瓔珞ツツジとシロヤシオ、どっちも見たいと欲張った日程だったのですが、まずは一つ目クリアです👍


この稜線のシロヤシオは例年5月中旬に花期を迎えます。

今年は開花が早い年だったので、5月下旬ではほとんど花を見ることができませんでした。

そして九鬼山でも出会った「ハ △ 山」の境界標石、今回も見つけました。


この石柱の意味が調べても分からなくて夜も眠れませんので、知っている人は是非教えてください!

登りがひと段落して、ストレートな道になれば皆さん要注意です。


上の写真のように一直線に伸びる道から左に外れた場所が、天子ヶ岳の山頂となります。

少し寄り道して天子ヶ岳の山頂に到着です。


山頂が寄り道扱いというのはなんですが、この先にお目当ての瓔珞ツツジが待ち受けます。

突如開けた場所に出れば、同じく瓔珞ツツジをお目当てに登られた登山者が、早速ツツジを愛でていました。

この方を含めたこの写真があまりにも素敵だったので、掲載させていただきます🙏


さて肝心の瓔珞ツツジですが…

満開では無いものの、風鈴のような筒形の花がふんだんに付いていました!😆

色もまだ青々しいですが、ここからピンク色に染まっていきます。


他の種類のツツジとは大きく異なる花のカタチですよね。可愛すぎて僕もカメラのシャッターを何度も押していました。

とはいえ瓔珞ツツジの花が小さいので、マクロレンズがこの時ほど欲しいと思った事はありません🥺


瓔珞ツツジは一般的には高さ1-2mになる落葉低木なのですが、天子ヶ岳の瓔珞ツツジは大木といって差し支えないほど立派なものになっています。


これもお姫様の想いの強さでしょうか。

炭焼きの男も、姫亡き後この瓔珞つつじを見て心を癒されていたのでしょう。

瓔珞つつじを堪能した後、富士見台という展望地が近くにあるという事で、こちらにも足を延ばしてみました。

ここからも富士の展望はばっちりです。


長者ヶ岳でも何度も見た富士山だったので、サクッと切り上げて周回ルートで下山します!

途中の分岐は白糸方面へ、その後は急登の下りです。

長者ヶ岳の登山道よりも足場が悪いので、気を付けて下っていきましょう。

グングン下りて植林地まで来れば

天子ヶ岳の登山口でもある、林道へ到着しました。

ここから駐車場まで戻るまで5kmのロード歩きとなります😱


天子ヶ岳から長者ヶ岳へ引き返した方が、ロードも避けることができて楽な行程なのですが、考えなしで

周回ルートで行けるじゃん

と決めてしまった今回のルート。


一般的には同じ道を辿らない周回ルートが楽しいとされる登山ですが、ピストンを選んだ方が楽で楽しい場合もありますね。


途中通る事になる「天子の森オートキャンプ場」には、公衆トイレがあります。


駐車場まで我慢できなかったので、こちらを使わせていただきました

休暇村富士の施設を横切れば、田貫湖北サイト駐車場まであと僅かです。

ここも写真スポットのようで、多くの方がここからの富士を写真に収めていました。


ここから約五分ほど田貫湖畔を歩いて、無事に登山口までに戻ってきました!

林道歩きは少し辛かったですが、今回も大満足の山行になりました🙌


登山口から富士山の展望、何より大沢崩れの迫力は、他の富士の展望地とは違う長者ヶ岳の大きな特徴でしょう。

そして天子ヶ岳まで縦走すれば、シロヤシオ、瓔珞つつじと、5月~6月なら花を楽しむこともできます。

富士山の展望では物足りないハイカーさんは、この時期に登られることをお勧めしますよ~👍



長者ヶ岳 立ち寄りスポット

前日の要害山に続き、長者ヶ岳、そして次の日も山行を控えていたので、今回は直帰することになりました。

とはいえ近くに観光地として名高いおすすめスポットがあるので、簡単に紹介させてください

白糸ノ滝

写真:静岡県観光協会HPより引用


今回の登山口、田貫湖北サイト駐車場から車で約10分。

登山口から近いところにあるのが「白糸の滝」です。


富士山の伏流水が溶岩壁から湧き出る滝で、幅約150m高さ20mの湾曲した絶壁の全面から大小数百の滝が流れ落ちます。

付近には食堂も立ち並んでいるようですので、登山後の食事と観光もかねて行くのもいいかもしれません。


長者ヶ岳まとめ

【今回の山行記録】

山行時間:05:35 距離:12.4 km

登り:925 m 下り:915 m

【標準コースタイム(目安) 6時間35分】

田貫湖北サイト駐車場ー0:15ー田貫湖キャンプ場分岐-0:40ー休暇村分岐ー1:15ー長者ヶ岳

長者ヶ岳ー0:50ー天子ヶ岳ー1:40ー天子ヶ岳登山口ー1:30ー休暇村富士ー0:25ー田貫湖北サイト駐車場


【アクセス(田貫湖北サイト駐車場)】

新東名高速道路の新富士ICから国道139号および県道414号を経由して23㎞。

・45台/無料

・トイレあり

・24時間出入り可

【アドバイス】

登山口にはトイレがあるが、長者ヶ岳、天子ヶ岳の山中には無し。

危険個所は無いが、天子ヶ岳から天子ヶ岳登山口に下りる場合は急斜面もあるので要注意。

登山レポにもあるが、周回ルートの方が時間がかかるので、天子ヶ岳まで行って周回する場合は余裕を持った山行計画を。

稜線のシロヤシオは例年5月中旬、天子ヶ岳の瓔珞ツツジは5月下旬に見頃を迎える。



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活用方法はジオグラフィカなどで活用していただけます。


続いての山行記録はこちら👇

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