1000年の未来をつくる『希望の薪』

「キャンプをする時は何が一番楽しみですか?」。多くの人はこう答えるのではないでしょうか、「焚火」であると。焚火に当たりながら過ごす時間は、キャンプに欠かせない癒しの時間。

近年のキャンプブームも相まって、キャンプで焚火をするための「薪」の需要が高まっています。今日はエルクでも売っているその「薪」のお話をいたします。

エルクで売っている薪は、山梨県の市川三郷町山保地区で桑茶を製造・販売している「桑郷(くわのさと)」さんから仕入れています。山保地区は人気急上昇中のキャンプ場「四尾連湖キャンプ場」のあるエリアです。桑茶を作っている「桑郷」さんがなぜ薪を売っているか。それは山保地区が抱える社会問題、ひいては日本全国の社会問題といえる事と関係していきます。


ー荒廃林が増えた要因

高度経済成長期に発展した養蚕業、この頃には多くの山や畑に桑の木が植えられました。これは養蚕の要であるカイコが桑の葉を食べるからですね。やがで海外製の絹の輸入が増えてしまい、日本の養蚕業が衰退をしてしまいます。使わなくなった桑畑には所有者の子供や孫世代の為を思って、木材資源である「スギ」や「ヒノキ」を植え始めました。これらの人工林は断続的に人の手によって管理・搬出をして、初めて資源としての価値を発揮します。しかし里山やスギ・ヒノキを植えた畑の所有者の高齢化により、これらの資源は維持管理できず、植林をした方たちの思いが生かされない現状となっています。


ー森林保全の意義

上述したように、山梨県だけでなく日本には荒廃林・放置林が増えてしまいました。木材の活用とまではいかなくても、ちゃんと管理をした森林には私たちが営む生活に多くの恩恵を与えてくれます。その恩恵の代表的なものといえば災害防止や環境保全が挙げられるのではないでしょうか。大雨や大型化した台風による土砂災害を防いだり土壌を保全する役割、水を山で保水することによって洪水を緩和したり水質を浄化する役割、森林には人間にとって間接的にも直接的にも命に関わる役割を果たしています。

(写真:林野庁ホームページより引用)

また近年山梨県内でも問題になっている、クマなどの野生動物が人間生活の場へ出てきていることも、森林保全活動と密接に関係しています。日本は古来から人間社会と奥山の間に「里山」をつくってきました。管理された里山は資源としてだけではなく、野生動物との緩衝地帯の役割を果たしていました。放置林が増えたことによって緩衝地帯である里山が縮小し、野生動物の出現・被害が近年増加しています。

正しい森林の保全活動をしなければ、利益どころか我々にも被害を及ぼす重大な社会問題となっています。


ー桑郷が目指す林業のカタチ

市川三郷町の森林面積は64%です。正しい山作り・放置林の解消によって、次世代に美しい価値ある森林を残そうと動いているのが「桑郷」さんです。桑の製造や販売を通して、市川三郷町の放置林問題を目の当たりにしてきました。山に負担をかけずに、地域の会社が地域の森林を小規模ながら持続的に管理する林業。森林を資源として考え整備し、収入だけでなく「環境」と「地域」をまもる林業のカタチを志し生まれたのが、エルクでも売っている「希望の薪」です。

(写真左:小500円、写真右:大600円)

正しい森林保全をするために間伐した木材を、薪として販売することによって市川三郷町の地域に多くの貢献をしています。四尾連湖キャンプ場を代表する美しい自然のエリアは、こういった林業のカタチ無くして次世代に受け継がれていきません

今回のお話をするに当たって、桑郷さんの方にお話を伺いました。その中で印象に残った言葉があります。

「林業は『先祖の恩を授かり、その恩を子孫に送る恩送りの仕事』です。木を植えた先祖の努力を受け継ぎ、未来の子供たちへ届けたい。」

関わり方は違えど、エルクも同じ山梨で山・自然を相手にお仕事をさせていただいています。これからも桑郷さんの「希望の薪」を通して、少しでも山梨の森林を守る活動に関われたらと考えています。


(写真:水明荘ホームページより引用)

これから冬となり、炎の暖かみがいっそう有難く感じる季節です。焚き火の燃料である薪がどこから取れたものか、どういう思いで作られたものかを知ることによって、焚き火の感じ方も変わるかもしれません。ちなみにこの『希望の薪』は四尾連湖キャンプ場の「水明荘」さんでもご購入していただけます。どうぞこちらの薪をご利用くださいませ。