今回スタッフ綾井がスキーで登ったのは鳥海山(ちょうかいさん)。山形県と秋田県に跨がる標高2,236mです。
今回の登山の目的は「サンセットドロップ」
日本海に面している鳥海山。夕陽が海面に沈むまではっきりと見る事ができる場所なんです。そんな場所で日本海に沈みゆく夕陽とそれに向かってスキーで滑降するのを写真で収めたい。
今回のロマンチックなスキー登山の提案をしてくれたのは、若手フォトグラファーの「武部努龍(どりゅう)」さん。努龍さんとスタッフ綾井で行くロマンチックスキー山行は思わぬ好天に恵まれ、充実の山スキーとなりました。
ちなみに「いい」写真が努龍さんの写真で、「凡」なやつがスタッフ綾井が撮った写真です。見ればわかります、やっぱプロはすごい。
突然ですが山の朝は早いですよね。どんな登山でも寝不足を我慢しながら登るのが常になってきています。
未踏の地である山形県、てかほぼ秋田なので甲府からの総移動距離は550km…7時間越えの運転になるため出発は前日のPM11:00です。寝不足どころではない寝ずの山行です。
すでに時刻は朝の5時30分。結局すべての運転をすることになる努龍さんも、日本海岸沿いの道路を走れば目が冷めた様子。このまま行ってもらいましょう。
登山口の鳥海牧場に到着したのはすでに7時半を回った時刻でした。ゴールデンウィークになると鳥海ブルーラインが開通して標高を稼げるのですが、ここは標高約500m。長いアプローチの始まりです。
バックカントリースキーの場合、スキー道具以外にもビーコンなどのアバランチギアが必携です(※冬山登山にも持つことが推奨されます)。それにテント泊装備もプラスされればザックがパンパンになりました。これで果たして滑る事ができるのだろうか…。
出だしは雪が繋がっていない為、スキーを担いでの歩きになります。この重荷を担いで兼用靴(歩行モードと固定モードのあるスキーブーツ)で歩くのが辛いこと辛いこと。これから楽しいことをするとは思えない猫背っぷりをかますスタッフ綾井。
時折姿を見せる鳥海山も、頂上は雲に隠れたまま。
ゲートから30分ほど歩けば雪が途切れずしっかりとついてきたので、スキーにシールを装着してこれからはスキーでのハイクアップ。スピードが上がります。
スキー一年目の綾井はこのスキー歩行がまだまだ新鮮で楽しいんです。対してカメラ機材も持ち上げて荷物が推定20kgオーバーの努龍さん、きつそうです。
標高を上げていくと徐々に展望が見え始めました。全く馴染みのない山域になるので、周りを見渡しても山座同定はとてもできません。頭の中の白地図をこれから埋めていこう。
肝心の鳥海山もしっかりと顔を出してくれました。ここから最高峰の新山が見えているのか、見えていないのかも定かではないですが、海側から見た鳥海山の印象とは全く異なります。
しばらくハイクアップして滝の小屋へ到着。小屋は除雪が入ったのか小屋前は地面が出ていました。
せっかくなのでしばし休憩をとります。寝不足に加えポカポカ陽気。ここでテントを張ってしまいたい…。
しかし今回の目的は「サンセットドロップ」。登山口方向に夕陽は落ちてくれません。ハイクアップ再開!
重たい身体ですがペースは不思議と落ちません。ずっとずっと右手に見えているのが
鳥海山(の外輪山)です。あの面ツルの斜面を滑れば気持ちいだろうな~
BCスキーは良い斜面があれば登頂を後回しで滑るのもありなんだけど、垂涎の斜面も目もくれずずっと歩きまくります
ここは月山森という小ピーク。ここから真正面の稜線に向かうのですが
けっこう落ちてる…登り返しもスキーでは厳しそう
そして海側に近づくと海風が強く吹き付けます。強風の中地図を広げて作戦会議。ここで標高を下げず右側の斜面をひたすらトラバースし続けることに決定。
ハイマツが出ているところもありますがトラバーズ開始。雪は緩んでいるので滑落の恐れは全くなかったです。
このトラバースがきつかった。すでに時刻は15時。こんなに滑らず歩くスキーは努龍さんも初めての経験だとか。
そして頂上をバックに二人で「ラスボス」と呼んだ大きな斜面を登り終えると
日本海と沈みゆく夕陽のお出迎え。光が海面で反射して赤くきらめく幻想的な光景。しばし三十路の独身男二人は、だまってその光景を目に焼き付けます。
もう少し行ったところで雪で覆われた御浜小屋に到着。こちらは日本海側に面しているため沈みゆく夕陽を見るのに最適な場所なんです。
反対側の鳥海山山頂方面はすっかり赤く焼けてきました。
急いで風よけの為に小屋の裏をスコップで掘り下げて、テント設営をします。急がねば夕陽と共に滑降するロマンチックピクチャーが撮れません。やっとこさ張り終えたと思えば
すっかり真っ暗でもう飲むしかなくなりました。設営後にはすでに陽が沈んでしまい「サンセットドロップ」はおあずけに。結果的に片道8時間の移動、滑走せずハイクアップのみ8時間の山行。寝不足と疲れのある2人は、乾杯後即寝落ちしました。
努龍さんが夜にテントを出て撮った鳥海山の夜景です。月光に照らされた鳥海山の雪の斜面、美しい光景ですが綾井は起きずに爆睡をかましてしまいました。
翌朝は日が出て明るくなってからスタート。一日目よりまして快晴無風の絶好の山日和。一日目はドタバタでしたが、頂上までもすぐにいけるだろうと朝はゆっくり出発です。
まだまだ滑走モードにはならず頂上へ向かって歩き出します。左手に靄でかすむ日本海を見ながらの登りです。
早朝の雪のコンディションはカリカリで登りにくかったですが、しばらくすると日の光に当たってゆるんできました。
こうなれば安心。外輪山の文殊岳に登り、山頂方向に目をやります。
鳥海山、でっかいなあー!最高峰の新山までは外輪山を回り込むようにして登らなければいけません。とてもスキーでは歩けそうになく、アイゼン歩行に切り替えて行くしかない(後でお客様に聞きましたが、外輪山から新山の下にドロップできるポイントがあるそうです)。
もういい加減に滑りたい二人は、さして相談することなく下山することは決意しました。バックカントリーってのに2日間ほぼ登ってしかない。
となれば時間も余裕ができて、ドローンの撮影会が始まります。快晴無風のドローン日和、努龍さんは担いできたかいがありました。
こちらがドローンから見る景色。登っても見る事ができない視点で、鳥海の外輪山から日本海を望みます。
本番はここから!登れても肝心の滑りの技術がイマイチの綾井からドロップします。
きんもちいい良いいいい!!!重荷を背負って滑れるか心配でしたが、急な斜面ではなく表面ザラメの滑りやすい斜面でした。
努龍さんも流石の滑り!
ずっとこんな斜面が続けばいいのに~(笑)。月山方面を見下ろしながら滑ります。スキーの下りはあっという間で、見上げればもう必死で歩いた外輪山はずっと遠くに行ってしまいました。
位置を確認しながら沢沿いを下っていると、ところどころ大きな穴が。恐ろしいので最後のシール歩行で登ってがんばります。
生還~!最後の下りはヘロヘロでまともな滑りはできませんでしたが、振り返れば喜びもひとしおで。
サンセットドロップも最高峰に登頂もできませんでしたが、不思議と満足感と心地よい疲労感たっぷりの山行になりました。山頂からの景色はまたおあずけです。
行く場所が遠ければ遠いほど、花や山の姿が違って見えてきます。東北らしいどっしりと大きな山体の鳥海山、山から見下ろす日本海、全てが新鮮に感じた鳥海山スキー登山でした。
にしても遠いんだよな~(T_T)
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