【2018/8/21 離山&地蔵ヶ岳】南アルプスの魅力が詰まった静かな名ルート

お盆が終わった8月21日、エルクの特別営業期間も終わり久しぶりの定休日でした。悲しいかな、エルクスタッフの綾井&深澤の独身コンビは揃って予定なし。前日の夕方にどこかへ行こうという話になり、この筆者である綾井から『離山』を提案した。

生粋の甲州人でクライマーのスタッフ深澤はなんと鳳凰三山を登ったことがない。むしろ北アルプスのほうが詳しいといった始末。ここは南アルプスのやぶ山を身をもって体験できるうってつけの登山になる。

離山という山は山梨の方でも聞き覚えがない人も多いでしょう。鳳凰三山の地蔵岳の北に伸びる尾根上に位置し、登山道のないやぶ山のバリエーションルートになります。北側からⅤ峰・Ⅳ峰・Ⅲ峰・Ⅱ峰・Ⅰ峰・離山本峰という順で、その間に鋭いギャップを抱える岩峰です。

僕も最近までは離山については全く知りませんでした。山を通じて出会った先輩K氏のブログを拝見し、その日からこのルートに行きたくてたまらなくなっていました。氏曰く「青松白砂ここに極まれり」と。

※上の離山の3つの写真はK氏のブログから写真を使用させていただきました。燕頭山ルートからと赤抜沢ノ頭からの写真です。

登山口は精進ヶ滝駐車場。地形図の右上のポイントのところから離山を経て、地蔵ヶ岳までいって一般ルートで下山します。

駐車場で準備をしていると、これからやぶ山へ入ると思えないスタイルの男が現れた。スタッフ深澤である。スキンメッシュを単体使用するスタイルはどうしても「ち〇び」が見えてしまう。ここは後ろ姿での自主規制をかけさせていただきます。

これでも緊急用の幕営具と補助ロープなどは持って臨みます。


さて大武川の支流、石空川(いしうとろがわ)にかかる橋を渡るところからスタートです。

さっそく離山から東に伸びる尾根に狙いを定めて、入りやすそうなところから急登を上がります。

出だしの急登ですでに綾井は息も絶え絶えで進みます。しかし深澤はさすがエルクNO.1の体力の持ち主でどんどん進む。先頭を追い越すことはないだろうとナビゲーションを丸投げ。

しばらくするとこの山行で初めてのマーカーを発見。たまに登山者も入るようで、踏みあとか獣道か判別できない程度の道がいくつか見られました。

苔むした巨岩群、ふかふかの土の道、やっと体が慣れてくると森の美しさを実感できる余裕がでてきました。

標高を上げると邪魔にならない程度の笹が現れます。広い笹尾根の急登を上がりながら、地形図にある1898mのピークを目指して一気に詰め上がります。

しばらくするとガスが一瞬抜けたのか、木々の間から光が差す幻想的な場所が現れます。地図を見なくとも僕たちをいざないました。
その場所は三角点1898m 「熊小屋」。
笹に埋もれた三角点は1904年(明治37年)に設置されたものらしいです。
100年以上前に置かれた点の記は、今もひっそりと時を刻み続けています。
木々がひらけているためガスが少し抜けると日が差し込み、幻想的な笹原の小ピークは一段とこの場所の美しさを感じさせる場所でした。
ここからは痩せ尾根を通過したり、獣道をお借りしたりと地形図を見ながら進んでいきます。
「ここは巻いていこう」「支尾根に気をつけて」など本来登山であるべき他愛の無い会話が、新鮮で楽しかったです。
離山に近い付いてくると、気の抜けない場所がちらほら。ヘルメットを装着して気合いを入れ直します。
ガスが濃くなり全く先が見通せませんでした。いまいち先のイメージないまま目の前の登攀に集中します。
上の写真がⅣ峰とⅢ峰のコルに降りた時に、Ⅳ峰側を振り返った写真です。ここは下降できたのですが、この先で行き詰まりました。
III峰への登りの弱点がつかめず、雨も降ってさらに条件が悪くなってきて、敗退も脳裏によぎりましたがここで作戦会議。
南斜面を150mほど下降して岩壁に囲まれたⅡ峰&Ⅲ峰をスルー、安全なところから本峰とⅠ峰の間のコルへ抜ける作戦に変更しました。
標高を下げてからは高度を保ちつつ、尾根と沢を交互に横断していき
ここで本峰とⅠ峰のコルへ抜ける。大きく巻いてもここに抜けれるか確証がなかったので、ここに出た時は本当に嬉しかったです!

最高点であるⅠ峰は進み返して登っていく。花崗岩が織りなす特異な露岩帯は、緊張が続いた僕たちを興奮させました。
離山の最高点であるⅠ峰(2310m)に到着。やっとここで大休止を取ることができました。濃いガスに包まれてるために、展望が無かったのが本当に残念です。

そして難なく次の本峰へ、多分ここが高いかなと一応撮影。山頂標もなにもない離山(2307m)に到着。疲れて冴えない顔をしています…。

ここから地蔵ヶ岳へ500m近く標高を上げなければならない。
取り付きの尾根を見失わないように下降と取り付きだけは慎重に確認します。
ここからは石楠花やハイマツが行く手を阻みますが、掻き分けながら進んで行きます。
深澤にとって初見になるオベリスクが近づくにつれ、彼はテンションが上がって稜線上の岩を超えながら進むライン取りを始める。やっぱりクライマーは岩に触れたいんだね。

標高を上げると稜線上に巨岩帯が連なってくる。あとちょっと。疲れで顔が引きつってます…。
ガスに包まれ展望が効かない僕たちにとって、それは突然現れました。
鳳凰三山の象徴「オベリスク」。初めて見るその後ろ姿。

最後は全身をハイマツに埋もれながら進み
オベリスクの後ろからその姿を触れること(嬉しすぎて抱きしめちゃいました)ができた。

お疲れ様でした!この山行の充実感が疲れも吹き飛ばし、笑顔で2人の記念写真を取ることができました。

ようやく一般道に合流し、地蔵ヶ岳から下降を始めるとガスが抜け始める。いっつもこうなんです。
鳳凰三山のオアシス「鳳凰小屋」ではコーヒーをよばれました。オーナーの細田さん、スタッフの皆様ご馳走様でした!!ここは夏よりも秋に宿泊のピークを迎えるそうです。この時期は狙い目ですよ。
燕頭山ルートでは熊小屋以来の青空が見えました。いっつもこうだと愚痴りながらも、展望はなくても満足できた山行の余韻か、足取りも軽く無事に下山できました。

さてついつい長文になってしまいました…。
下山してから次の日には2人して「また行きたいね」と口を揃えて言うほど。藪漕ぎや登攀・ナビゲーションスキル・体力・判断力、総合的な登山力を求められた今回の山行は、まだまだ山の経験が浅い2人にとって得がたいものになりました。
山に感謝!ありがとうございました!

アイテム紹介

今回は日帰りの予定のためギアも軽量化。
BLUEICE コーカスライトハーネス
今回は使わなかったものの、たった84gの超軽量ハーネスを深澤は持参。緊急用や補助的な使用に最適な革命的ハーネスです。
ウィングラム ハイカーボ300
これは登山アイテムというわけではありませんが、登山やトレイルランニングの後のカロリー補給にぴったり。
300kcalを一度にとれるので、今回のような激しい山行後のカロリー補給にぴったりでした。